ワンちゃんネコちゃんのノミダニ予防は、ペットの健康を保つだけではなく、家庭内の人獣共通感染症のリスクを軽減するためにも極めて重要です。
当院では可能な限り通年での予防をおススメしております。冬でもノミやダニの予防は重要です。暖房の効いた部屋でもノミやダニは生存し、ペットに感染する可能性があります。
適切な予防方法を提供いたしますので、どうぞお気楽にご相談ください。
ノミは1日に数十〜数百万もの卵を産み、卵は1〜6日でう化し、室内では畳やカーペット、ソファなどで幼虫が成長します。ノミは13℃以上で活動を始め、幼虫から成虫になるまで2週間ほどで成長してしまいます。このようにノミが一匹居ただけでも非常に繁殖力が高い寄生虫です。ノミが動物に寄生吸血することにより動物に激しい痒みや皮膚炎を引き起こすとともに、様々な病気をもたらす可能性もあります。ノミが媒介する病気の中には重度の貧血を起こしたり、人獣共通感染症である猫ひっかき病や瓜実条虫症等もあり、ノミによる感染は注意が必要です。
ノミの唾液中に含まれる成分がアレルゲンとなり、激しい痒みや湿疹、脱毛などを伴う皮膚炎を起こします。人間もノミに吸血されると、激しい痒みなどを引き起こします。
特に子犬や子猫の場合、大量のノミに吸血されることで貧血を起こす可能性があります。
瓜実条虫はノミやシラミの体内で成長し動物がノミを摂取することで感染します。(ワンちゃんやネコちゃんではグルーミング時)
感染すると、ワンちゃんやネコちゃんの糞便中や肛門の周囲に瓜の実や米粒に似た瓜実条虫の体の一部が排泄されます。ほとんどの場合は無症状ですが、腸炎をおこす可能性があります。
人でも子供が誤って幼虫が寄生したノミを摂取することで感染してしまうことがあります。
Bartonella hensley (ルルトネラ菌)という菌によって引き起こされる病気です。ルルトネラ菌は猫ノミにより運ばれ、感染した猫ノミに刺されたり、感染した猫ノミのいる犬から感染することもあります。ルルトネラ菌に感染している猫に引っ掻かれたり、噛まれるなどによって、人にも感染することがあります。感染している猫ではほとんど症状を示しませんが、人では発熱や咬傷部位の発赤、リンパ節の腫脹が起こります。〈ノミのライフサイクル〉
イラストを載せていただきたいです。
ダニは動物への寄生、吸血、落下、脱皮を繰り返しながら成ダニへと成長します。多くのダニは地上で数千個もの卵を産み、う化した幼ダニは草むらで脱皮し動物に寄生吸血を行います。ダニが動物に寄生し吸血をすることにより皮膚炎や犬ルベシア症、猫ヘモプラズマ症、など様々な恐ろしい病気に感染してしまいます。さらにダニの吸血による被害はワンちゃんやネコちゃんだけではなく、人にもSFTSやQ熱、ライム病などといった命に関わる病気をもたらす可能性がありダニによる感染はワンちゃんネコちゃんだけではなく私たち人も注意が必要です。
ノミと比べると吸血する量が多く、寄生が大量であれば貧血を起こしてしまいます。
刺された部位に発赤や腫れなどの炎症を起こします。また、無理に吸血しているダニを除去するとダニのクチルシが体内に残り、化膿してしまいます。
ピロプラズマ類(原虫)が原因となってよって引き起こされる病気です。ピロプラズマ類は日本では主にフタトゲチマダニによって運ばれ、フタトゲチマダニが犬に吸血することによって感染します。ピロプラズマ類は犬の赤血球に寄生することで赤血球が破壊され、貧血や脾腫などが起こります。かつては西日本に多く見られていましたが、近年では関東・東北地方からも発症報告があります。また、ピロプラズマ類には幾つか種類が存在し、B.caninsに感染した場合、赤っぽい尿(血色素尿)や衰弱が急性的に起こり70%以上の確率で死に至ることもあります。
細胞壁のない保護膜に包まれたグラム陰性菌であるヘモプラズマが病原体で引き起こされます。マイコプラズマの感染経路は完全には解明されていませんが、ダニによる吸血や猫同士の喧嘩、母子感染が考えられています。マイコプラズマは猫の赤血球に寄生することで、赤血球が破壊され貧血や黄疸、脾腫、発熱などが起こります。
重症熱性血小板減少症候群ウイルスが原因となって引き起こされる病気です。主に日本ではウイルスを保有しているマダニに刺されることで感染します。感染症法では四類感染症に位置付けられ、日本では主に西日本で発生が広がっています。
ワンちゃんネコちゃん以外にも人での感染も報告され、感染すると死にいたる場合もあります。特にネコちゃんや人は感受性が高く、重篤化しやすく命に関わる恐ろしい病気です。
(感染したネコちゃんの半数以上が致死的な経過たどり、人ではご高齢の方での重症化が多く報告されています。)ワンちゃんでは不顕性感染が多いですが、一部の症例では重症化した例も報告されているため注意が必要です。またSFTSに感染した動物に人が噛まれた場合や感染した人との濃厚接触によっても感染してしまいます。動物に噛まれることがない場合でも、感染した動物の体液や排泄物の経口や粘膜接触によっても感染します。
SFTSに感染した場合、潜伏期間は約6〜10日程度で発熱や嘔吐、元気消失、食欲不振がみられ臨床検査では血小板や白血球の減少が特徴的にみられます。ワンちゃんやネコちゃんに対しての有効な治療法は明確にはなく症状に対しての予防的な治療や症状の軽減を目的とした支持療法が行われます。
有効な治療がなく感染すると重篤化しやすく命に関わるため、予防対策が最も重要になってきます。野山や草むらに入ることがないワンちゃんネコちゃんでも私たち人が持ち運んでしまうこともあります。(室内猫ちゃんでのSFTSによる感染も報告されています。)ペットの命そして私たち人の命を守るためにもしっかりとした予防をしてあげましょう。