動物病院では日々、検査や手術のために、全身麻酔を実施する必要があります。麻酔科では、手術が安全に行えるように手術中はもちろんのこと、さらには手術前後の全身状態の管理を行います。
患者さんによっては、上記の他に様々な検査を組み合わせることがあります。
ASA-PS分類
米国麻酔科学会(American Society of Anesthesiologists)による術前の身体状態(Physical Status)を評価する方法です。
患者さんの全身状態によって麻酔のリスクを5段階で評価していきます。
また、それぞれの患者さんや手術内容に毎にリスクが異なります。
「血圧が下がるかもしれない…」「麻酔から覚めた後に呼吸がうまくできないかもしれない…」
様々なリスクを評価し、そうならないように対策し、そしてもしその事態に陥ったら対応できるように、あらかじめ準備して麻酔に臨みます。
麻酔は「鎮静(意識がないこと)・鎮痛(痛みがないこと)・筋弛緩(動かないこと)・有害反射(痛みによる血圧上昇など)の抑制」の4要素を達成していることが望ましいとされています。人医療では、鎮静薬・鎮痛薬・筋弛緩薬を用いてバランスよく調整する方法(バランス麻酔)が一般的であり、近年、動物にも安全な麻酔を行うためバランス麻酔が実施されるようになってきています。
様々な薬剤を組み合わせることで、それぞれの副反応を抑えることができるメリットがあります。
麻酔中は、心電図、血圧などの項目を常にモニタリングしています。リアルタイムの情報を得ることで、瞬時に対応できるように気を配っています。
単に麻酔薬を投与して麻酔をかけることや、鎮痛薬を投与して痛みを取ることは獣医師であれば誰しもが可能です。では、私のような麻酔を専門とする獣医師が考える安全な麻酔医療の提供とはなんでしょうか?
麻酔科医の役割は、患者動物ごとに周到な麻酔計画をたて、各種モニタリング項目より全身状態の把握につとめ、全身麻酔や外科手術によって生じる身体への様々なストレスを可能な限り軽減し、動物たちの負担を限りなく0に近づけることです。
麻酔のみで病気の治療はできませんが、麻酔がなければ治療できない病気は数多く存在します。だて動物病院スタッフのみなさんと協力し、きめ細かい周術期医療を提供していきたいと思います。