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2024.04.24
【vol.7】短頭種気道症候群
初めまして。
だて動物病院 副院長の阿美古です。呼吸器科を担当しています。
今回から不定期で呼吸器疾患や検査についてブログを書いていきます。
初回になるので気合を入れて書きすぎました。ご了承ください。。。
次回からはもう少しゆる〜く書いていこうと思います。
お付き合い下さい!
では、初回は巷で話題の短頭種気道症候群(Brachycephalic Airway Syndrome;BAS)について書きます。

◎短頭種気道症候(BAS)
短頭種に見られる先天的な解剖学的異常(先天的形態異常)が原因で起きる、慢性的に進行していく疾患群(症候群)です。またこの解剖学的異常により、消化器疾患や皮膚疾患も引き起こされます。
BASに関連した呼吸器症状は、吸気努力が原因で引き起こされます。その為興奮時にガーガーと音を立てて呼吸をしたり、。また、他の長頭犬種に比べて体温調節が上手くいかないために熱中症になりやすい為注意が必要です。

◎BASを引き起こす解剖学的異常
先天的な解剖学的異常により引き起こされる変化を一次的形態変化、この一次的形態変化が持続する事で引き起こされる解剖学的異常を二次的形態変化と言います。 BASを引き起こす解剖学的異常 BASを引き起こす解剖学的異常
◎BASの診断方法
様々な検査により総合的に診断します。以下に検査法を列挙します。
・問診、身体検査
・X線検査
・X線透視検査(咽頭虚脱や気管虚脱の検出)
・CT検査
・血液検査
・喉頭検査
・鼻腔内視鏡検査
・気管支鏡検査

まずは問診から始めます。日常生活を知る事は診断にとても重要で、問診から疑われる部位を推測できることが多々あります。例えばいびきが強くなってきているのか?、睡眠時無呼吸はあるか?呼吸が荒いのは興奮時のみか?咳はないか?などです。特に咳は判断が難しいため動画撮影は有効です。気になっている症状を獣医師に見せるは有効ですので是非試してみてください。
次に身体検査を行い、外鼻腔の狭窄の程度や、聴診による心雑音の有無の評価を行います。
慢性的に吸気努力がある症例は心疾患に罹患している可能性もあるためです。問診や身体検査後に画像検査(X線検査やX線透視検査など)によりBASの仮診断を行っていきます。
最後に麻酔をかけた検査でBASの確定診断とグレード分類を行います。

◎BASの治療法
内科療法と外科療法があります

○内科療法
体重管理;ダイエットするだけで治療になります。
薬物療法;抗炎症薬や胃酸抑制剤など

○外科療法
BASに対する外科治療の目的は、狭くなった気道を開通することです。気道を狭くしている原因とは前述した解剖異常(外鼻孔狭窄、軟口蓋過長、喉頭小嚢反転)になります。

外鼻孔形成(図)
鼻の軟骨を切除し、縫い合わせることにより鼻孔(気道)を広げます
外鼻孔形成
術前
外鼻孔形成
術後

軟口蓋切除(図)
軟口蓋が長くなり喉頭(気道)を塞ぐため、軟口蓋を切除することにより、気道を広げます。
術前
軟口蓋切除
術後

喉頭小嚢切除(図)→後ほど
反転した喉頭小脳が喉頭(気道)を塞ぐため、喉頭小嚢を切除することにより気道を広げます。
喉頭小嚢切除
術前
喉頭小嚢切除
術後

BASに対する外科は上記以外にも存在し、状況により組み合わせて治療して行きます。
具体的には、披裂軟骨切除や喉頭蓋固定、気管切開(一次、永久)などが挙げられます。この手技を選択する場合はBASが進行した状態になります。(一時的→二次的変化)

以下のフレブル ちゃんは他院で軟口蓋切除後も努力呼吸、失神などの主訴に来院されました。様々な手術を組み合わせて加療した術前後の呼吸動画です。大変でしたが上手くいってよかった!

◎最後に
BASは慢性的に進行していく疾患です。飼い主さんが気づく事により早期に対処する事ができ、進行を抑えることができます。ただ、外科手術をすれば終わりでは無く、その後の体重管理も重要になります。
また一般的な外科手術をしても症状が改善しないことがあります。ご相談ください。

最後までお付き合いくださりありがとうございました!
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