だて動物病院

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病気の話
第6回目
犬の心臓病 〜僧帽弁閉鎖不全症のはなし〜
犬の心臓病といっても、様々なものがあります。
その中で今回は、犬で最も多い心臓病“ 僧帽弁閉鎖不全症” についてお話していきます。
こんな犬種に多いです
キャバリア・キングチャールズ・ スパニエル、マルチーズ、シーズー
上記が代表的な好発犬種ですが、高齢動物はどの子にも発症の可能性があります。
心臓のはたらき
病気のはなしの前に、まずは心臓のはたらきについて説明していきます。
  • 心臓は、全身に酸素を豊富に含む血液を送り出すためのポンプです。
  • 心臓には、血液の逆流を防ぐ" 弁" が4つあります。これにより血液は一方向のみに流れていくようになります。
  • 左心室から左心房への血液の逆流を防ぐのが、僧帽弁です。
血液の流れ ~左心を中心に~
呼吸により、肺で酸素を取り込んだ血液は、肺静脈と呼ばれる血管を通って心臓の左側の部屋のひ とつ左心房へ運ばれます。血液は左心房から左心室へ流れ込み、ここから送り出され、大動脈を通って全身へくまなく運ばれます。この時、左心室から左心房へ血液の逆流を防ぐ弁が僧帽弁です。
原因はなに?
遺伝的な問題高齢に伴い、僧帽弁が変性することで弁が弱くなり発症します。
僧帽弁の逆出を抑える腱索とよばれる靭帯の断裂も原因のひとつになります。
どんな病気で、どんな症状がでるの?
1. 逆流
僧帽弁の変性、腱索(けんさく)の断裂により 僧帽弁が左心房方向へ引き込まれ完全に閉じることができなくなります。
これにより、左心室→左心房へ血液の逆流が 始まります。この時点では、ワンちゃんに症状はみられません。
2. 心拡大(房、室)
血液の逆流に伴い、以下に挙げる二つの変化が心臓にみられるようになります。
(1) 左心房の拡大
左心室から左心房への血液の逆流に伴い、最初にみられます。
左心房のすぐ上には気管が通っており、左心房の拡大が進行すると気管を圧迫してしまいます。 これにより、咳の症状があらわれます。
(2) 左心室の拡大
左心房への血液の逆流に伴い、全身へ送り出される血液量の低下がみられるようになります。そこで心臓は、なんとか一回の拍出量を保つために左心室を拡大し、一回の拍動で送り出す血液 量を増やそうとします。この結果、左心室の拡大がみられます。
心不全が進行し、心臓から十分な血液が送り出されなくなることで、元気がなくなったり、散歩を嫌がるようになったりします。
3. 肺静脈の拡張
左心房の拡張が限界を超えると、その先にある肺静脈の拡張が起こります
4. 肺に水が漏れる
肺静脈の拡張に続いて起こるのが、肺水腫です。肺水腫まで症状が進むと心不全は末期段階で、呼吸不全など非常に苦しい症状がみられるようになります。
診断法
身体検査・聴診
僧帽弁で血液の逆流が起こると、聴診にて早い段階で心雑音が聴取されるようになります。非常に簡便な検査で、動物の胸に聴診器をあてるだけで、病気の有無が判定可能です。心雑音の程度により、病態のグレード分けが可能ですが、心臓内の細かな情報を全て検出できるわけではありません。
心臓エコー検査
超音波にて心臓を描出する検査です。心臓の動きはもちろん、血液の流速、弁の状態、逆流血液量の評価等、僧帽弁閉鎖不全症の確定診断、細かな病態評価が可能です。この検査にて、適切な処方箋の作成を行ったり、今後起こり得る病態の変化を把握したりします。

僧帽弁からの逆流血液量を確認しているところです。モザイク状にカラーで映し出されている領域に逆流が認められます。
僧帽弁の状態を確認しているところです。この症例では、僧帽弁の一部が左心房方向へとびだして、閉じきれなくなっています。
胸部レントゲン検査
心臓の大きさの評価、エコー検査では評価が難しい気管や肺の状態を評価します。

異常:正常と比べ、顕著に拡大した心臓と気管の拳上が認められます。
正常:正常な心臓サイズと気管走行。
心電図検査
心不全に併発して起こることのある不整脈の検出が可能です。心電図の解析により心臓の拡張度合も評価可能です。
治療法
僧帽弁閉鎖不全症の治療は、病態説明で示した“ 咳” の症状が出てから行うのが一般的ですが、身体検査での心雑音の程度や、心臓エコー検査で心機能の評価を行うことで、早期に治療を行うこともあります。
治療には、通常飲み薬を使用します。心臓の負担を減らす降圧剤や利尿薬、心機能を高める強心剤等を一種類ないし数種類用いて治療を行います。
治療は、一度始めると途中でやめることはできないため、飼い主様の献身的な介護が必要になります。
最後に
僧帽弁閉鎖不全症は、犬で起こり得る最も多い心臓病のひとつです。
高齢での発症が比較的多いため、心不全の症状が出ても、“ 年だからしかたないのかな?”と思われがちで、病気の発見が遅れることが多い病気です。どの子も年に二回程度は病院で、聴診器による検査だけでも受けていただけると、病気の早期発見により、病状の極端な進行を食い止めることが可能です。